侍映画、というジャンルがあるかどうかというのは微妙なところですが、時代劇の中で特に「侍」という特別な価値観、倫理観の中で生きる身分の者をクローズアップした映画についてそう呼ぶのは、あながち変なことではないでしょう。とりわけ海外においては、新渡戸稲造の著書「武士道」によって広まった侍の概念は人を魅了し続け、「侍映画」として日本の時代劇に興味を持つ映画ファンが多いのもまた事実なのです。
そんな侍映画の中でベストな映画を挙げろ、ということになると多くの人は迷うことでしょう。侍が登場する映画は古くからあり、そして最近でも多くの良作が上映されているため選択の幅がとても広いからです。
ベスト侍映画候補
それでもぱっと浮かぶ候補を挙げていくと、黒澤明監督の多くの作品、小林正樹監督の「切腹」と「上意討ち 拝領妻始末」、岡本喜八監督の「侍」、若山富三郎の「子連れ狼」シリーズ、勝新太郎の「座頭市」シリーズや、近年でも山田洋次監督「たそがれ清兵衛」など沢山の作品がすぐに思い出されます。しかし総合的に考えるとそれらの中から最後はやはり黒澤明監督「七人の侍」を挙げざるを得ません。
映画界に多くの影響を残した作品
「七人の侍」は侍映画の代表、というだけではなく、世界中の多くの映画監督や作品に影響を及ぼしています。西部劇「荒野の七人」が「七人の侍」のリメイクなのは有名な話ですし、ジョージ・ルーカス監督「スターウォーズ」からスティーヴン・スピルバーグ監督「プライベート・ライアン」まで多くの名作映画に多大な影響を及ぼしているのです。その事実がこの作品の偉大さを如実に表していると言っていいのではないでしょうか。